2020年度前期荒井ゼミ基本方針について

担当教員・荒井明夫

○はじめに

2月に第一回「荒井ゼミ・顔合わせ会」を開催した時は、まさかこんな状態になるとは思ってもみませんでした。しかし考えてみるとあの時には既に中国・武漢で大変な状況になっていたわけですから私たちの側にも問題があったとみるべきですね。特に、今に続く日本政府の対応のまずさは、これは「人災」でもあるように思います。
さて、ともあれ、今年度前期は、「非対面型の授業・演習形態」が余儀なくされました。
以下、新年度前期の進め方について説明します。

1.前期の目的

(1)神奈川県相模原市で2016年に発生した障がい者等46人の死傷事件を題材にしたテキストを読み、事件に潜む日本社会の様々な問題を考えます。
(2)その事件の奥深くにあると思われる日本社会の「優生思想」の現状について考察し教育の課題を考えます。

2.前期の目的の土台となる問題関心

私は、昨年秋のゼミ紹介で次のように述べました。「学生諸君は、教育によって人間は成長・発達しよくなると思っているのではないか。しかし逆に、教育を受けることで人間は非人間的になることもあるのだ。日本の教育の歴史はそのことを示している」と。
「教育を受けた人間が非人間的になった例」として、戦争中の日本人の数々の残虐行為を挙げることができます。しかしここで問題にしたいのは、この間に発生した無差別殺害事件です。一流の教育を受け、一定の学歴をもった人間が、簡単に人を殺してしまう、この事実を私たちは深く考える必要があります。
例えば、神奈川県相模原市で発生した「知的障がい者施設やまゆり園」での植松聖死刑囚による合計46人の障がい者死傷事件です。彼は、大学を卒業して教員を志望していました。その彼が、なぜ多くの障がい者を死傷させる事件を起こしたのか、裁判は結審しましたが、多くの謎は残ったままです。例えば、彼は、事件の起こったやまゆり園の職員でした。普通ならば、日々接している障がいをもつ人々を愛おしむことがあってもよいはずなのに、彼は何故「障がい者は生きている価値が無い」と思うようになったのか。彼の生育暦はどうだったのか、などなど疑問はきりがありません。文献や論文を手がかりにして検討したいと思います。

3.すすめかた・その1(5月から6月中旬)

(1)保坂展人『相模原事件とヘイトクライム』(岩波ブックレット)をテキストに使用します。
(2)指定した日までに、全員で指定した箇所を読み、600~800字程度でコメントします。
コメントというのは自分の感想・特に考えたこと・わからなかったこと、です。
(3)それを全員でHPにアップします。討論はできませんが、他の人の考え・意見を知ることはできます。(意見のアップの仕方は最後に書きます)。
(4)全員の意見がアップされると、討論はできませんが、考えることができます。
※テキストを読み終えたら全員でまとめの小レポートをを作成します。
(5)HP上での意見交換・メールでの意見交換などを歓迎します。方法はあとで相談します。
(6)テキスト以外の参考論文をいくつか紹介して、テキストと同じくコメントしていきます。

4.すすめかた・その2(6月中旬から7月下旬)

※この期間は個人指導を重点とする期間にします。
(1)まず、毎週一人または二人ずつ分担して、次の発表をしてもらいます。
(イ)なぜ教育学科に進学しようとしたのか。教師になろうと思ったきっかけはなにか。
(ロ)大学に入学した後の自分は、教育学科でどのような学びをしてきたか。特に関心をもった問題(いじめ・貧困・体罰・学力、等々)はどのような問題だったのか。
(ハ)その問題に自分はどうして関心をもったのか。その問題のどのようなところに関心をもったのか。
☞これを小レポートとして、1000字~1300字程度にまとめて提出して下さい。題名をしっかり付けることが大切です。例えば「いじめはなぜおこるのか・加害者側から考える」というようにです。
これは学問的にいうと「初発の問い」といいます。どんな大学者も、ここから始まるのです。
というよりもこれが「最初の大切な問い」なのです。
(2)私は、それを読んでいろいろなコメントをします。教員の指導はこころからです。
そしてそれを読んで学生諸君は次に向けて勉強をすすめ、次にまた後日レポートをするというようにすすめていきます。教員から指導された点を大切にして少しずつ進めていくことになります。これがチュートリアルという形式です。
(3)学生諸君は、その指導にしたがって作業を進め、また進展状況を報告します。それは後日また説明します。

5.HPへの文章のアップの仕方について。

ここではHPへの文章のアップの仕方を説明します。
HPに入る前にあらかじめ、ワード等でレポートの文章を完成させておいて下さい。
HPへの入り方は説明しました。
☞ユーザー名とパスワードを入力してHPに入ります。
☞左上すみに小さく「大東文化大学文学部教育学科荒井明夫研究室」と出ます。そこにカーソルを当てるだけで「ダッシュボード」が出てきます。それをクリックして下さい。
☞ダッシュポードの下に「投稿」があります。
☞クリックするとさらに「新規」が出てきます。
☞「新規」をクリックします。すると中央にタイトル名と大きな空白が出てきます。
☞タイトル名を入力します。(例・荒井明夫「テキスト第一章のコメント」)
☞あらかじめ完成させたワードの文章の全文をスクロールしてコピーしておきます。
☞HP上の中央の空白に「貼り付け」ます。
☞HPの右側に「カテゴリー」がありますのでそこで「教育史3」にチェックを入れます。
☞最後にそのカテゴリーの上にある青地の「公開」をクリックします。
☞再度左上の「大東文化大学文学部教育学科荒井明夫研究室」をクリックします。
※画面はHPの「教育史3」にあなたの文が張り付けられた形で出てくるはずです。
これでおわりです。

※慣れるまで何回もテストして構いません。その場合「自分の名前とテスト中」と入れて下さい。「テスト中」のものは少したって勝手に荒井が削除します。どうしてもうまくいかない場合には荒井までメール下さい。

6.具体的な事について。

(1)諸準備について。
テキストの購入とHPへの入り方およびHPへのレジュメの投稿の仕方を4月23日木曜日までに終えて下さい。
(2)具体的な日程
保坂展人「相模原事件とヘイトクライム」第一章を全員が読み、コメントを4月27日月曜日23時50分までにHPに入れて下さい。直前ですと入力に混み合いますので余裕をもってアップして下さい。
同じく第二章は、5月4日月曜日・23時59分、第三章は、5月18日月曜日・23時59分。
第四章は、5月25日月曜日・23時59分とします。
文献を読む時間を予習時間として前日までに、文章を書く時間を月曜日の90分として想定します。私はみなさんにできれば月曜日の1限(9時10分から10時40分)を基本的には文を書く時間として考えてほしいと思っています。

○おわりに.学生諸君の「学習イメージ」について

おそらく、学生諸君が履修する全ての授業がこうした方法で進められることと思います。
重要なことは、日々の時間管理です。荒井ゼミの場合でいえば、想定しているのは、一週間の内で文献を読む時間とレポートを書く時間です。
進めていく上で困ったこと・わからないことがあったらいつでもメールで荒井まで相談してください。
困難な状況ですが、頑張りましょう。
なお、当面はHPを利用しますが、履修登録後にmanabaに切り替えることもあります。そのときにはまた呼びかけます。                             以上