2018年度教育学科卒業詔書授与式での学科主任挨拶

2019年3月20日、大東文化大学・教育学科での卒業詔書授与式で主任として挨拶しました。

卒業生のみなさん。御卒業おめでとうございます。みなさんの卒業をお祝いしてひとこと御挨拶します。

 大東文化大学の教育学科での学びを通じて、みなさんは、自分を大きく成長させることができたでしょうか。卒業のお祝いを機に、この点を深く掘り下げてほしいと思います。なぜならば、みなさんがこれから出て行く社会は非常に厳しい社会です。その厳しさに負けないためには、自分の長所と弱点をしっかりみつめることが大切だと思うからです。
 今日本の社会は厳しい社会だといいました。その意味はこうです。みなさんはこの大学に2015年に入学し、今年卒業されます。この間に何があったか。みなさんが大学に入学された2015年には集団的自衛権の行使を可能とし、海外で他国軍を後方支援することができる安保法制が成立しました。日本は「戦争しない国」から「戦争ができる国」にこの国の基本的なかたちを変えました。また、昨年は「テロ等の対策」という名目で共謀罪が成立しました。
 戦後の日本社会の根幹ともいうべき「平和・人権」が根底から覆されようとしています。
 こうした一連の流れをみる時、近代日本の歴史の流れである治安維持法からアジア太平洋戦争へと流れていく、その道筋を重ねてみることができます。
 教育の歴史を紐解くと、戦争への道を辿る際に、教育が常に先陣を務めてきたことも浮かび上がってきます。翻って、今日の教育を観る時、異なる存在である他者を受け止めない「いじめ」があり、虐待・体罰という「教育の名の下での暴力」が、残念ながら横行しています。
 卒業されていく教育学科の卒業生のみなさん。みなさんがこれから活躍される社会はこうした社会なのです。決して平和とはいえない現代社会においてどのように生きていくか、そのことが厳しく問われることと思います。「どのように生きるか」に対してお一人お一人の回答があると思います。こうした問いに対し、教職に付く人もそうでない人も大学での学びを続ける中で回答を示してほしいと思います。そして教育を暴力ではなく、希望ある営みとして取り組んでほしいと思います。「どう生きるのか」という厳しい問いかけに対し、みなさん一人一人が厳しく問いかけ、学び続け、あなたたちらしい回答を行動で示してほしいと願っています。
 これからの御健闘をお祈りしてお別れの言葉とします。