「親」についての作文 志賀百香

 私の父は設計士で、母は専業主婦。父とは、もう5年以上会っていない。私が小学3年生の時に単身赴任で別居することになり、単身赴任が終わってからもいまだに別居が続いている。私が中学生の頃は、たまに帰ってきたが、会話はほとんどなく、父はリビングでずっとテレビを見ているだけだった。母や弟と喧嘩をしているといきなり怒鳴られて、手を挙げられることがよくあった。私の中の父は、たまに帰ってきて怒る恐怖の存在でしかなかった。だから、父と仲の良い友達をみると羨ましいというよりは信じがたい気持ちになる。
 母は、専業主婦でいつも家にいた。私は、小学2年生から週6で習い事をしていたので、母は私の送り迎えで忙しかった。送り迎えの車の中で母はいつも私の話を聞いてくれた。その時間がとても好きだった。私は、高校生まで母に依存していて何を決めるにも母の意見を聞かずにはいられなかった。母は、絵も書道も上手で、勉強も運動もできて、いくら努力しても勝てない絶対的な存在だった。夏休みのポスターや書き初めも母に指摘されたら一からやり直していた。しかし、大学生になって一人暮らしをして、何でも自分で決めなければならなくなった。その時はじめて、自分が母に依存していたことに気づいた。それと同時にどれだけ自分が母に頼りきっていたことも痛感した。また、バイトをはじめ働くようになってからは、父のことも考えるようになった。たとえ関わりがなかったとしても、私が今日まで不自由なく生活できたのは紛れもなく父のおかげであり、感謝すべき人には変わりない。すぐに関係性を取り戻すことはできなくても少しずつ自分から歩み寄りたいと思う。