『相模原事件とヘイトクライム』　第三章コメント　馬場朝日

第三章は、かなり残酷でショッキングな内容ばかりであった。断種法やT４作戦などの内容は、残酷な行為で許されないものである。この章を読むまでは、ヒトラーが障がい者たちの虐殺を無理に行わせたと思っていたが、医師や看護師たちの「優生思想」の思いが募り、この大量虐殺が行われたと知り、恐怖を感じた。ドイツだけでなく、少しでも優生思想を抱えた人間が存在し、それを後押しするリーダーが存在すれば、このような事件はいくらでも起きうるのではないかと考えた。ヒトラーがT4作戦を切り上げたあとも、虐殺行為が野生化したというのは、人々の心の中に存在した、小さな優生思想に火をつけてしまったのではないだろうか。
　そのような虐殺の中での、フォン・ガーレン司教の説教の内容は興味深いものだった。障がい者は、非生産的だから生きる権利がないとしたら、障害を持っていなくても生産的でない人は、生きる価値がないということになるという内容はとても納得できた。それと同時に、障害を持っていなくても生産的でない人は、生きる価値がないと考える人も存在するのではないかと疑問に思った。しかし、この説教を受けたヒトラーは、作戦を中止にしたということは、障がい者を「非生産的だから」という理由だけで虐殺したのではないということだ。他にも理由が存在するのではないかと思う。
　また、この章でも人々の中に隠れた優生思想が垣間見えた。政治家や教育委員会の人の発言からそのようなことが読み取れた。また、今では妊娠初期に胎児が障害を持っているかを見ることが可能である。それは、良い点もあるが、障がい者への良いとはいえない見方が現れているのではないだろか。３章を通して、過去も現在も隠れた優生思想を持っている人が存在することが分かった。