相模原事件とヘイトクライム 第三章 坪井翼
「当時のT4作戦に手をそめた医療関係者は、組織的に行われた計画殺人に罪の意識や疑念を持たず、「正義」と割り切っていたのでしょうか。」と書かれているが、これは少し違う。確かに、割り切っていた部分もあったのかもしれない。しかし、私はそれだけではないと考える。私は、政府や立場的に上の人からの命令によって、医療関係者の思考が停止したためにこの虐殺が実行されたと考える。昔の番組で、戦時下で朝鮮人の統制を現場で担当した人にインタビューするというものがあった。その中で、どうしてひどい仕打ちをし続けたのかという質問に対し、「軍の上層部からの命令だったから。」というものがあった。当時は命令を遂行することだけを意識しており、罪の意識や行動について考えることはなかったという。これがとても印象に残っている。私は、このようなことがこのT4作戦にもあったのではないかと考えている。もし、実際に実行した現場の人たちが、「やらなきゃ首だ」「お前もあっち側になりたいのか」などと言われ、脅され、追い詰められていたと仮定するとどうだろうか。悪いこととはわかっていても、思考を止めてやらざるを得ないという状況が生まれるのではないだろうか。そして、虐殺の方法はガスによる殺害である。つまり、刺殺や撲殺などの直接的な殺害ではないということである。この直接は殺害していないという事実が現実を直視しないための口実になったのではと私は考える。
障がい者の大量虐殺は許されない非道な行為である。しかし、だからと言ってこれを実行した人は全員悪だと考えるのは早計であると考える。なぜなら、実際に実行した人すべてが優生思想に基づき合意の上で虐殺をしていたとは考えられないからである。私はこの虐殺行為の裏にあった民間レベルの背景も考えることが必要であると私は考える。