フリッツ・ホルム陸軍大将「戦争を絶滅させること受合の法案」

「我等」(昭和4年1月号)に長谷川如是閑が紹介した、デンマークのフリッツ・ホルム陸軍大将の「戦争を絶滅させること受合いの法案」を紹介する。

長谷川如是閑いわく「何処の国でもこの法律を採用してこれを励行したら、どうしたって戦争は起こらないことを、牡丹餅判印で保証すると大将は力んでいる(後略)」

「戦争行為の開始後または宣戦布告の効力を生じたる後、十時間以内に、次の処置をとるべきこと。即ち左の各項に該当する者を最下級の兵卒として召集し、できるだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従わしむべし。

1、国家の元首。ただし君主たると大統領たるとを問わず。もっとも男子たること。2、国家の元首の男性親族にして十六歳に達せる者。3、総理大臣、及び各国務大臣、ならびに次官。4、国民によって選出されたる立法府の男性の代議士。ただし戦争に反対の投票をなしたる者はこれを除く。5、キリスト教または他の寺院の僧正、管長、その他高僧にして公然戦争に反対せざりし者。

上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として召集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態を斟酌すべからず。ただし健康状態については召集後軍医官の検査を受けしむべし。上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は戦争継続中、看護婦または使役婦として召集し、もっとも砲火に接近したる野戦病院に勤務せしむべし」

長谷川如是閑は「これは確かに名案だが、各国をしてこの法律案を採用せしめたるためには、も一つホルム大将に、『戦争を絶滅せること受合いの法律を採用させること受合いの法律案』を起草して貰わねばならぬ」と結んでいる。

抱腹絶倒のブラックパロディともいうべきか。この、デンマーク国のフリッツ・ホルム大将、実は長谷川如是閑の創作人物らしい。