学生諸君のレポートに学ぶ
2019年度の講義と学生レポートに対する評価が終わった。
今年度後期の講義科目「学校教育特別研究」の課題である学生諸君のレポートはとても面白かった。学生諸君がどのように問題を捉え考えているかがよく理解できたからである。この講義は、「子どもの貧困から教育を捉える」というテーマで15回の講義である。最初の2回は日本の貧困の特徴として「みえにくいこと」と「母子家庭に貧困が集中していること」を多様なデータを用意して講義する。次に、乳幼児・小中学校の学齢児童・学校給食問題・高校生のアルバイト・大学生の高学費と奨学金、と発達段階に即して貧困の問題を取り上げる。最後は、日本国憲法の理念に照らして、具体的な解決策を探ることにしている。
講義で私が重視しているのは多くのデータを用意して説得的に展開することである。
そしてレポートの課題は、受講した学生諸君が最も関心のあるテーマを選択し、講義で使用したデータを用いて貧困問題がどのような教育問題にリンクするかを解明し、さらに貧困克服の方策を具体的に提言するというものであった。
学生諸君のレポートを熟読するのに数日かかったが、実に面白かった。
以下、数人の学生が同じように指摘してきた意見を匿名にして紹介する。
まず第1は、改めて自分の恵まれた環境に気づき、自分の親へ感謝する意見である。
(Aさん)
「日本の貧困問題について知らないことが山ほどあった。私自身の今まで生活してきたことはすごく恵まれていることであり、心から親に感謝しようと思う。毎日一生懸命、両親は働いていた。幼かった頃は、帰りが遅い両親に対して、とても寂しい思いをしていたが、今考えると、ありがたいものばかりであった。21歳となった私は、親孝行をきちんとしようとこの授業を踏まえてさらに思った。」
第2は、大学生を取り上げることで自分に重ねて講義を聴いた学生が多かったという点。
(Bさん)
「私は、大学生の貧困問題について触れられていたことがとても興味深く新鮮でした。他の講義で、小学校~高校までの貧困については良く触れられることも多いのですが、自分が受けてきた講義で大学生の問題について触れるのは初めてでした。自分に思い当たる節がいくつもあり自分はより恵まれていて、行動に移さなければいけないという危機感も感じました。半年の間、とても良い勉強ができました。」
第3は、学生諸君なりの「貧困克服対策」が非常にリアルで面白かったという点。講義では「貧困対策として消費税増税は必要か?」と提起。増税よりも税金の使途に問題があるのではとしていくつかの事例を講義した。
すると学生諸君はもの凄く多様な意見を展開してくれた。次のような意見などは政治家にも読ませたい内容である。
(Cさん)
我々が払う税金の使い方を検討しなおすという策だ。現在、沖縄県名護市辺野古の米軍基地建設に伴う警備に計326億円を費やす。1日に換算すると1375万円を警備につかう。新基地警備に反対する市民運動の監視・弾圧のための警備員配置であるが、実際には一日80~100人ほどがローテーションで立っているだけで税金の無駄遣いである。また、日本の貧困対策に使われる金額が330億円とほぼ同額である。326億円をドブに捨てている状態ならばそのお金を貧困対策に充てるべきである。また、アメリカ戦闘機F35Aを3機分買うお金と認可保育所221か所建つ金額が同じであることから、戦闘機を買う個数を減らし、その浮いたお金を使い保育所を建てることができる。いつあるかわからない戦争への資金投資よりも今、困窮する待機児童問題を解決するために国は資金を投資するべきである。私たち国民が払う税金は国民のために使われるべきものであり、現在抱える日本の問題を少しでも改善できるようにするためのお金である。
講義の中で以上のような貧困対策を考えた中で、私は皇位継承にかかる費用を考えた。2019年に新たな「令和」という時代が始まったが、元号と天皇が変わったことしか変化はない。しかし、皇位継承で様々な伝統的儀式や行事、宴会が行われ、それにかかる費用も税金で賄われる。皇位継承にかかる費用は総額166億円とされ前回よりも3割増加した。最も行事・儀式が集中する2019年度は144億円かかるとされた。私は、天皇が変わっただけでお祭り騒ぎになることが不思議である。皇位継承に伴う数多くの行事や儀式を2,3個減らし、その分のお金を子どもの貧困対策にまわすことをしてほしい。例えば、饗宴の儀とよばれる祝宴に4億6000万円の費用が発生する。また、儀式に招待する外国から賓客の滞在費を外務省は50億円を計上した。さらに警備関係費が38億円余りとされる。これらを廃止・縮小するだけで、公立小学校の学習費の約半数を占める給食費を少なくすることができる。文部科学省によると平成30年度の小学生の数は約642万人であるため約70億あれば給食費を1/4減らすことができる。
などなど。
わずか3本のレポートしか紹介できないが、こうしたレポートからまた来年度の講義へのエネルギーを頂戴している。学生諸君に心から感謝し、同時に学生諸君にアッパレ!!である。