2つの「ベートーヴェン交響曲全集」について。
今年、2つの「ベートーヴェン交響曲全集」が発売された。それを聴いた感想をまとめたい。
一つは、アンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の全集(写真上)である。指揮するアンドリス・ネルソンスは1978年生まれでラトビア共和国出身の指揮者。新世代指揮者のホープである。すでに今年、1972年生まれのキリル・ペトレンコが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任した。指揮者界は世代交代が続いている。私は、約10年前にアンドリス・ネルソンス指揮のウィーン・フィルでドヴォルザーク「新世界」を聴いてその美しさに感動したのでこの指揮者に注目していた。彼の指揮する「ベートーヴェン全集」だが、しっかりした骨格のベートーヴェンで、最近の流行りの「超快速」(最近演奏会で演奏されるベートーヴェンはどれもみな超快速である)のベートーヴェンではない。特に、第三、第五、第九はがっしりとした落ち着きのある演奏で、第六も美演である。彼のような若い指揮者がこうしたベートーヴェンを聞かせてくれるのはなんとも嬉しい。
もう一つは、オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団の全集(写真下)である。しかもBlue-raydiskで、以前クラシック音楽専門のクラシカ・ジャパンで放映されたものであるから、クレンペラーファンにはたまらない。クレンペラー晩年(1973年没)の1970年の演奏で、雄大なスケールの演奏である。私は、クレンペラーをはじめとする1950年代に活躍した、フルトヴェングラーやヘルマン・アーベントロートなどの第九を愛聴盤としているが、クレンペラーの第九ももちろんその中に含まれる。クレンペラーの演奏は、どの曲もどっしりとしてテンポはやや遅めであるが、それがなんとも言えない風格を醸し出している。
今年の年末はこの2つの「ベートーヴェン全集」を楽しむことにする。