相模原事件とヘイトクライム第二章のコメント 志賀百香
第二章では、匿名報道問題から障がい者への社会的差別と実名報道の必要性について考えていきたい。相模原事件の匿名報道は、被害者が障がい者であることを理由に警察が認めた特例措置である。実名報道を拒む被害者の家族の意向は明らかにされていないが、家族が障がい者であることが知られて差別や偏見などの人権侵害を受けることを恐れたからだと思われる。その結果、被害者についての情報がほとんど公開されないまま、植松容疑者の主張ばかりが報道されることとなった。これでは、被害者の具体的な人物像が想像できず、不正確な情報ばかりが流れてしまう。実名報道によって、被害に遭われた方々には、家族や友人がいてそれぞれに趣味や能力があり懸命に生きていたという事実を伝えることが、情報の信頼性を高めて二度と悲劇を繰り返さないために必要だと考える。
しかし、近年では、被害者の家族に対する報道被害が問題となっており、匿名報道を希望する被害者の家族が増えている。だが、障がい者を例外とするのは不公平であり、報道の信頼性を損ねてしまう。
私は、記者が被害者、遺族との信頼関係の中で実名を公表し、事実を正確に伝えるべきだと考える。例外を作らずに、被害者の名前を公表することの価値を理解してもらえるように努力すべきである。そのためには、報道後の遺族との向き合い方が重要となってくる。