第4章「相模原事件とヘイトクライム」 志賀百香
本誌で藤井さんは、「障害のある人に直に接してもらうことが大事」だと述べている。現在の日本社会は、普段の生活で障がい者と接する機会がほとんどなく、分離されているように感じる。これにより、障がい者への無関心が社会全体に広がり、差別を生み出しているのではないだろうか。障がい者差別解消のために障がい者権利条約が批准され、障害者差別解消法が施行されたが、多くの人々が無関心であるため本質的な解決に繋がっていない。無関心であることは、今の社会制度を肯定していることと同じであり、障がい者を無意識の内に差別して傷つけているということを自覚する必要がある。また、自分が生活の中で不自由だと感じたことのないものが、実は少数の人達を排除しているということにも気づかなければならない。
社会には、障がい者も健常者も同じ人間だという考えがある。しかし、これが障がい者への無関心を助長させているのではないだろうか。同じ人間ではあるがすべての人が同じ能力を持っているわけではなく、ハンデを抱えて他者の助けを必要としている人もいる。障がい者差別についてより多くの人々に関心を持ってもらうためには、メディアで障がい者の方達が情報を発信できる場を設けることが大切であると考える。障がいへの理解を深めるためには本やネットで得た知識だけでなく、当事者の声を聴くことが必要であり、子どものうちに障がい者の方たちと交流できる機会を増やすべきである。
「優生思想」の考え方を持つ人たちの多くが、生命の選別が社会幸福をもたらすと考えている。だが、現実、自分とは異なる人間を排除しても問題解決にはつながらない。他者を社会的カテゴリーに当てはめて関心を向けるのではなく、個々の具体的な生と向き合うことが必要である。