最近の読書日記

最近9月中旬以降の読書日記です。気がつくと音楽関係、特にフルトヴェングラー関係が多いですね。気ままな読書の結果でしょうか。

仙北谷晃一先生の『フルトヴェングラーとの語らい』は、本格的なフルトヴェングラー論です。論文調なので夜の眠りの前、というわけにはいきません。先生は「音楽は芸術である。ながら音楽などけしからん」と仰っています。もとより私もフルトヴェングラーの演奏する曲は不思議と「ながら」はできずに深みに入り込みます。ヘッドホンが不可避です。しかし、全部が全部そうかというとやはり「ながら」があっても良いと思いますが。とりわけバッハやモーツァルトは「ながら」も快適だと思っています。また、先生はフルトヴェングラーとカラヤンの対比は「東西の横綱」とする評価に異論をはさみ、前者は文句無い横綱だが後者は「せいぜい小結」という評価には思わず笑ってしまいました。両者を対比して論じるのは、フルトヴェングラー時代のベルリン・フィルでティンパニ奏者だったテーリヒェンをはじめとして多々あります。概してフルトヴェングラーの演奏にみられる精神性の強調が主流ですね。私自身も賛成ですが、カラヤンの「美」の追求も肯定しています。ウィンナ・ワルツや「ばらの騎士」の美しさ。

宇野功芳先生の『私のフルトヴェングラー』は非常に読み易いフルトヴェングラー論です。いろいろな角度から論じた好著です。同先生と福島章さん・中野雄さんの『クラシックCDの名盤』(新旧)はクラシック音楽ファン必携の本です。演奏家をめぐる3人の自由な討論は本当に面白い、ある一人が酷評する、しかし別な二人が賛美する、あるいはその逆、などなど。この中野さんの学生時代の恩師が丸山真男先生とのことで、丸山真男先生とのプロ級の音楽談義が『丸山真男音楽の対話』。日本を代表する近代日本政治思想家・丸山真男の、別な側面を見る思いで一気に読めました。

西山伸さんの名著『検証・学徒出陣』。昨年80年だったこともあり、何かと採り上げられる「学徒出陣」ですが、制度史的にも実態史的にも未解明な問題が多くある中、しっかりとメスを入れてくれた名著です。著者の西山さんは、全国の大学史に精通しているだけあって、各大学の沿革史を渉猟しながら、学徒出陣経験者の体験を(戦没学徒兵の手記にまで言及して)検証しています。この問題に対する新たな角度からの問題提起も随所にあり、非常に重要な本です。最後に夏目漱石『三四郎』。ゼミの今月のテキストです。何回目になるでしょうか、再読しました。ゼミ生諸君との感想交流が楽しみです。